2019/12/26
DTM等のレコーディング用にヘッドホンを欲しいが、高額なヘッドホンはちょっと無理、と考えた事は有りませんか?そこで、コスパ抜群のミドルクラスのヘッドホンから、レコーディングに最適なヘッドホンを5機種厳選しました。
この5機種は、単にコスパが良いだけでは有りません。上級機の音や構造を継承しているものが多く、うち3機種は、Shure、ゼンハイザー、AKGとプロユースの音響メーカーです。
スタジオ等のレコーディングモニター用にヘッドホンをお探しの方は、是非この記事を参考にして下さい。
レコーディング用のヘッドホンについて
レコーディングヘッドホンとは
レコーディング用のヘッドホンに求められる特性は、一言で言えば”音を忠実に再生する”事です。変な音色を付けず、小さな音から大きな音迄忠実に再生される事が要求されます。
またヘッドホンに要求される性能では、周波数帯域が広く、解像度が高く、立ち上がり速度が速い等です。逆に、レコーディング用に要求されない(必要性が無い)事は、デザインです。
更に、耐久性が高い事が要求されます。一般家庭と違い、スタジオでは連続使用時間が長い等タフネスさが必要となります。
それと、長時間掛けても疲れないヘッドホンがいいわ
良いヘッドホンを選ぶには
では、良いヘッドホンを選ぶにはどうした良いでしょうか?
当たり前かも知れませんが、一言で言うと、ご自分の好みに合ったヘッドホンを選ぶことが正解だと思います。何処にこだわりが有るか(解像度、低音の質感、装着感等)、優先順位をつける事で、選び易くなります。
ボーカリストの方は、御自分の声等を聴きながら歌う事が、気にならないヘッドホンが良いでしょう。
これからご紹介するヘッドホンは、ヒアリングテストを何回も行った結果、レコーディング用に最適とおすすめできるヘッドホンです。どれも特徴が有りますので、後述の「ヘッドホンの選び方のコツ」記事も参考にして選びましょう。
それでは詳しくご紹介致します。気になったヘッドホンが有れば、チェックして下さい。
レコーディング用ヘッドホン おすすめの5選
SHURE SRH940
特徴
- 用途:バランスが良い周波数特性と、低歪み化によって、シビアなモニター用やリファレンスヘッドホンに最適。
- デザイン:スタジオのレコーディングエンジニアや、ミュージシャン等のプロ向けのデザイン。
- ボディ:頭をしっかりホールドするヘッドバンドや、便利な着脱式ケーブル(2種類)を採用。
- その他:ジッパー付きハードケースが付属。末永く使える様に、別売で交換用イヤパッドがある。
SHURE(シュア)社は、ヘッドホン以外に、マイクロホンやミキサー等のオーディオ機器を製造販売する米国のメーカーです。SRH940は、SHUREのヘッドホンの中でも、特に一押しのヘッドホンです。その理由は、価格を超えた音質の良さです。
このクオリティなら、「全帯域に渡る正確なレスポンスを備えたハイエンドモデル」(SHARE社カタログ引用)と呼ぶに相応しい製品でしょう。シビアなモニターには、おすすめのヘッドホンです。
音質
- 中低域:低域はタイトで、ローエンド迄伸びている。中域はボーカルの表現力が素晴らしい。
- 高域:ハイエンドの延びが有り、息遣いまでリアルに表現する。金管楽器やシンバルの音が綺麗。
- ダイナミックレンジ:音の強弱も難なくこなし、フルオーケストラの広がり感も有る。
- その他:解像度は非常に高く、細かい音までしっかり再現する。
周波数バランスがフラットで、解像度が高く、立上がり等の反応が早いヘッドホンです。また、高域が非常に綺麗で、楽器一つ一つをリアルに再現します。
上位機種の、SRH1840やSRH1540と比較しても、音質的な差は少ないと感じました。
SHUREは、古くからプロ用オーディオ機器のメーカーです。音にこだわる人も納得する音作りです。
外見と装着感
見た目の高級感は、さほど感じられません。実力主義(外見より音質重視)のヘッドホンかも知れません。
装着した時は、本体重量(322g)の割に、重く感じませんでした。耳の圧迫感は少ないですが、長時間装着すると頭頂部が圧迫される様な感じでした。
基本仕様
型式 | 密閉ダイナミック型 |
---|---|
再生周波数 | 5Hz~30kHz |
インピーダンス | 42Ω(1kHz) |
音圧感度 | 100db (1mW) |
重量(ケーブル除く) | 322g |
公式サイト | SHURE_SRH940 |
※リンク先からはブラウザの戻る(←)ボタンでこのサイトに戻れます。
SENNHEISER HD599
引用先:YouTube)eイヤホン
特徴
- 用途:音質の総合評価は、価格以上の実力。モニター以外にゲームや映画鑑賞からオーディオ用迄、オールマイティに使える。
- デザイン:ハウジングがプリン色の為、愛称「プリン」と呼ばれる。
- ボディ:SENNHEIZERらしく、耳を優しく包むヘッドバンド。軽量化され、長時間の装着も疲れ難い。
- その他:保証期間が2年と長い。別売で交換用イヤパッドがある。
SENNHEISER(ゼンハイザー)社は、ヘッドホンやマイクロホン等を手がける、ドイツの音響機器メーカーです。HD599は、人気モデルHD598の後継機種です。プリンなんて可愛いらしい愛称で呼ばれています。
この機種は、SENNHEISERのヘッドホンの中では、ミドルクラスですが、音質は価格以上の実力が有ります。装着性が良い為、長時間掛けても疲れ知らずです。
音質
- 中低域:開放型とは思えない程、低域は豊か。但し、ローエンドの延びは今一歩。中域は厚みが有り、ボーカルがとても綺麗。
- 高域:刺激的な音はなく、バランスが良い高域。
- ダイナミックレンジ:ほどほどの広さ。フルオーケストラより、ポップス系の音楽が得意と言える。
- その他:解像度が高い。ドラムを叩く音がパシッと決まり、楽器を明瞭に鳴らす。音の定位感も良い。
豊かな低域をベースに、マイルドな高域と言った周波数バランスです。クラシックの様なワイドレンジの再生より、ポップス系の音楽が向いている感じです。
トランスデューサーと言う独自技術が用いられ、定位感や反応スピードがとても良い印象です。音楽を楽しんで聴けるヘッドホンとして、お薦めします。
外見と装着感
ハウジングがプリンの様な独特な色の為、デザインは好みが分かれるかも知れません。しかし、安っぽい作りではなく、渋いと表現できる様なデザインです。尚Amazon限定で、ブラックモデル(HD599SE)も有ります。
イヤーパッドは耳をすっぽり包む大口径で、厚みがあるクッションをベロアという生地で包んでいます。この為、装着感に対しては、さすがSENNHEISERのヘッドホンらしく、抜群に良かったです。
装着感が良くて聴き疲れしないなら、長時間使えるわね。
基本仕様
型式 | 開放ダイナミック型 |
---|---|
再生周波数 | 12Hz~39kHz |
インピーダンス | 50Ω(1kHz) |
音圧感度 | 106db (1mW) |
重量(ケーブル除く) | 250g |
公式サイト | ゼンハイザー_HD599 |
<スタジオモニターの定番_HD 600>
ワンランク上を狙うなら、ゼンハイザー HD600です。ゆったりとした音ですが表現力はさすがです。
ゼンハイザー ヘッドホン オープン型 HD 600【国内正規品】
Meze Audio 99 CLASSICS
引用先:YouTube)Meze Audio公式
特徴
- 用途:低音に量感が有る。クラシックのモニター用にお勧め。
- デザイン:ハウジングがウォルナット(クルミ材)の木製で、高級感が有る。
- ボディ:重量が軽いせいか、装着感は軽やかな感じ。ワイヤとヘッドバンドで、頭を包む仕組み。
- その他:別売で、専用ポーチや交換用ヘッドバンドがある。
Meze Audio(メゼ オーディオ)社は、2009年に創設されたルーマニアのヘッドホン・イヤホン専業のメーカーです。特徴は、天然木材を手作業で削り出したハウジングを使っている為、世界に一つしかないオリジナル品だそうです。
音質は、見た目より低域の量感があり、刺激的な音はしません。デザイン・音質とも、上品な感じのヘッドホンです。
音質
- 中低域:ボリュームたっぷりの低域に、上品な音色の中域が旨くバランスされている。
- 高域:刺激的な音はしない。ハイエンド迄フラットに伸びている。
- ダイナミックレンジ:大きな音より小さな音を旨く鳴らす感じで、適度な広さを持つ。
- その他:解像度や反応速度は普通だが、音の微妙な余韻を旨く表現する。
デザイン重視のヘッドホンかと思いましたが、見た目以上に音が良いヘッドホンです。中低域に厚みがあり、量感豊かな低域に、フラットな高域といったバランスです。
ウッドハウジングの影響か、強いアタック音は、刺激を抑える様な響きに変換されます。音場が広く、弦楽器やボーカルの表現力が豊かな為、クラッシックを聴くには持ってこいの逸品です。
外見と装着感
ウォルナット(クルミ材)のハウジングは、部屋のインテリアとしても楽しめます。もし埃等の汚れが気になる場合は、別売で専用ポーチが有りますので、これに収納しましょう。
装着感は良好で、ワイヤと手触りが良いソフトレザーのヘッドバンドで、優しく頭を包み込みます。重量も軽い(260g)為、長時間の使用でも疲れないでしょう。
高級感が有るから、旅館やホテル等のお部屋にもフィットしそうね。
基本仕様
型式 | 密閉ダイナミック型 |
---|---|
再生周波数 | 15Hz~25kHz |
インピーダンス | 32Ω(1kHz) |
音圧感度 | 103db (1mW) |
重量(ケーブル除く) | 260g |
公式サイト | Meze Audio 99 CLASSICS |
final SONOROUS II FI-SO2BD3
引用先:YouTube)final SONOROUS公式
特徴
- 用途:明るい音色で、些細な音まで表現する。スタジオやミュージシャンのプロのモニター用に最適。
- デザイン:スタジオ等のプロが使う様なデザイン。
- ボディ:ハウジングは、共振を抑制するガラスを加えた強化樹脂を採用。またハウジングに穴を設け、筐体内部の空気の流れを最適化している。
- その他:ドライバーユニットにチタン振動板を採用。またケーブルは、ロック機構付着脱式。
finalと言う名は聴き慣れないかも知れませんが、日本のS’NEXT株式会社の商標です。S’NEXT社は、ヘッドホンやイヤホン等を製造販売するメーカーです。このヘッドホンは、徹底した音質重視の設計ポリシーが伺える製品です。
ドライバーユニットには、チタン振動板が使われています。ハウジングの材料は、共振を抑制するガラスを加えた強化樹脂です。更に振動板の空気の流れを最適化する通気口(穴)を設けています。
音質
- 中低域:フラットな低域をベースに、明るめの中域がつながる。ボーカルは、ややハスキーな感じ。
- 高域:高域の延びが驚異的。楽器の倍音迄しっかり再生されている感じ。キーボード等の電子音がとても綺麗。
- ダイナミックレンジ:中程度の広さ。シンバル等の大きな音でも潰れない。
- 解像度(分解能):解像度は非常に高い。空気感までリアルに再現する。
- その他:音場は広い。
驚異的な高域の延びがあるヘッドホンです。周波数バランスでは、高域が強調された感じです。ハイレゾ対応のヘッドホンと明記されていませんが、おそらくハイレゾサウンドが楽しめるのではないかと思います。
解像度は非常に高く、些細な音もリアルに再現します。定位感も良い為、音源の位置まで明瞭です。もし、フラットな高域がお好みならば、SONOROUSⅢ の方が自然な感じが味わえるでしょう。
外見と装着感
スタジオやミュージシャン等のプロが使っていそうなデザインで、このデザインは好みが分かれるかも知れません。実物は写真で見るよりも高級感が有ります。
装着感は、イヤーパッドの感触が良い為、圧迫感は少ないです。重量がやや重い(410g)為、長時間の使用は厳しいかも知れません。
基本仕様
型式 | 密閉ダイナミック型 |
---|---|
再生周波数 | ‘- – – |
インピーダンス | 16Ω(1kHz) |
音圧感度 | 105db (1mW) |
重量(ケーブル除く) | 410g |
公式サイト | final SONOROUS II |
インピーダンスが16Ωと非常に低い為、同じボリュームなら、他のヘッドホンより大きい音がでます。
AKG K553 MKII-Y3
特徴
- 用途:原音に忠実なサウンドで、スタジオモニター用にお薦め。
- デザイン:AKGらしく、大型のガッチリしたデザイン。
- ボディ:独自のハウジング構造で、空気の流れを最適化。ヘッド・バンドは13段階に細かく調整可能。ケーブルは、着脱式を採用。
- その他:50mmの大口径振動板を採用。堅牢性が高い為、保証期間が3年と長い。
AKG(アーカーゲー)社は、オーストリアの老舗の音響機器メーカーです。(正式な社名は、Akustische und Kino-Geräte Gesellschaft m.b.H)音楽スタジオ等の、プロの現場でよく使われる事で有名なメーカーです。
このヘッドホンは、K553 PROの後継モデルで、音質は無論の事、ボディの作り迄、とても完成度が高い製品です。密閉型ですが、開放型の様な、広々としたサウンドの傾向です。
保証期間が長い(3年)と言う事は、耐久性に自信があるのですね。
音質
- 中低域:パワフルな低域で、厚みがある。ローエンドの延びも十分。中域では、ボーカルが生々しい。
- 高域:フラットな高域で、音をはっきりと表現する。
- ダイナミックレンジ:広さは十分で、大きな音で鳴らしても、余裕すら感じる。
- 解像度(分解能):解像度は高い方。
- その他:AKGの中では、とても広がり感がある。ドラムのアタック音等の反応が早い。
密閉型のヘッドホンですが、音場が広く、音をはっきりと表現します。50mmの大口径振動板のせいか、低域はとてもパワフルです。周波数特性は、うまく調整されていて、ほぼフラットなバランスです。
変に味付けされた音は、全く感じられません。自然な音です。まさに、「原音の再現性を追求した」(AKG社カタログ引用)ヘッドホンと言えそうです。
外見と装着感
外見は、寒い国の防寒具を想像しそうな、大きなハウジングが目立つデザインです。堅牢な印象も与えます。サイズ的には大型ですが、掛けてみると、意外と心地よく感じられます。
また、ヘッド・バンドの長さは、13段階に細かく調整できる為、最適な位置にロックできます。あらゆる頭のサイズに対応したヘッドホンと言えます。
基本仕様
型式 | 密閉ダイナミック型 |
---|---|
再生周波数 | 12Hz~28kHz |
インピーダンス | 32Ω(1kHz) |
音圧感度 | 109db (1mW) |
重量(ケーブル除く) | 316g |
公式サイト | AKG K553 MKII-Y3)ヒビノ |
ヘッドホンの選び方のコツ
ここでヘッドホンの一般的な選び方のコツについて、3つお教えします。
同じシリーズで比較する
同じメーカーで、同じ様な価格帯に複数の機種が有る場合は、もし「良さそうな機種だが今一歩」の機種が見つかれば、同じシリーズで別の機種を比較・検討して下さい。
たとえば今回選定した、final SONOROUS II で、高域が強調気味と感じたら、同じ様な音の傾向でフラットな周波数バランスの、final SONOROUS Ⅲ を比較して下さい。
final SONOROUS III ダイナミック型ヘッドホン FI-SO3BD3
音色が原音から離れているものは選ばない
音色が原音から離れたヘッドホンは、長く使うと、疲れがすぐに来たり、正しい音の評価が難しくなる事が有ります。ヘッドホン初心者の方であれば、原音に忠実と呼ばれているものを選んだ方が良いでしょう。
装着感が良いヘッドホン
長時間のモニターには、装着感が良いヘッドホンを選びましょう。注意する事は、装着感は、短時間のテストだと意外と判りにくいものです。できれば、15分以上装着したままで問題が無いか、確認できれば良いでしょう。
長時間のモニターなら、SENNHEISER HD599、Meze Audio 99 CLASSICS、AKG K553 MKII-Y3 がおすすめです。
<ご参考_既存のヘッドホンを長時間使いたい場合>
既存のヘッドホンを長時間使いたい場合、ヘッドホンカバーを着けてクッション性を高める方法が有ります。
一時的な方法ですが、汚れたらカバーを洗えますのでとても便利です。
傷んだイヤーパッドが復活 mimimamo スーパーストレッチヘッドホンカバー L (黒) ※各機種への対応はメーカーHPのヘッドホン対応表をご確認ください
終わりに
如何でしたか。今回ご紹介したヘッドホンは、偶然にも海外メーカー製が多くなりましたが、レコーディング等のプロ用機材に強い(実績が有る)メーカーが選ばれた結果だと思います。
またレコーディングスタジオの方々は、原音(正しい音)をよくご存じですので、ここでおすすめしているヘッドホンなら、その期待に応えられる事と信じております。
この記事を参考に、良いヘッドホンが見つかる事を願っています。最後までお読み頂き、誠に有難う御座いました。